ファシリテートGの「のり」と申します。
今回は、PMBOK第7版においてプロジェクト・パフォーマンス領域(プロジェクトの成果を効果的に提供するために不可欠な、関連する活動)の一つとされているステークホルダー・パフォーマンス領域の概要についてお話します。
ステークホルダー・パフォーマンス領域とは、端的に言いますと、プロジェクトに直接的・間接的に関わる人たちと良好な関係を築いてプロジェクト成功のために協力してもらおうというものです。
どうやって「プロジェクトに直接的・間接的に関わる人たちと良好な関係を築く」かという部分はプロセスとして確立されており、ステークホルダー・エンゲージメントと呼ばれています。
ステークホルダー・エンゲージメントは、次の5つの活動で構成されます。
①ステークホルダーの特定
本活動ではプロジェクトに関わる人たちを全て洗い出します。
PM、プロジェクトチームメンバーに始まり、関係部門、協力会社、顧客、エンドユーザーなど多岐に渡ることもあれば、実は数人だったということもありますが、後で対応の優先順位を付けるので、ここでは制限なく洗い出します。
②ステークホルダーの理解と分析
本活動では洗い出されたステークホルダーの以下のような特徴を把握し、対応方針を策定します。
・プロジェクトに何を期待しているのか?
・プロジェクトにどれくらいの権限、影響力を持っているのか?
・プロジェクトに協力的か非協力的か?
ここで言う対応方針とは、例えば、現状プロジェクトに何の興味も無いステークホルダーに対して、どうやったら協力者になってもらえるかのアプローチ方法を指します。
③優先順位付け
本活動では洗い出されたステークホルダーを対象に対応の優先順位付けを行います。
当然ながら、プロジェクトに影響力があり、かつ協力的なステークホルダーは最優先で対応すべきです。
④エンゲージメント
本活動では「優先順位付け」の結果に従って、「ステークホルダーの理解と分析」で策定した対応方針を基に、実際にステークホルダーとコミュニケーションを取ります。
⑤監視
本活動では「エンゲージメント」で実施したコミュニケーションの結果を以下のような観点で評価します。効果が上がっていなければ原因を突き止めて改善策を練ったたうえで、再度ステークホルダーとコミュニケーションを取ります。
・ステークホルダーはプロジェクトを理解し、進め方に合意しているか?
⇒プロジェクト成果物への変更要求が多発している場合、④の不全が考えられ、ステークホルダーのプロジェクト理解や合意が不十分な可能性があります。
・ステークホルダーとの建設的な関係が築けているか、抵抗・反対勢力からの影響は最小限に抑えられているか?
⇒ステークホルダー関連のリスクや課題が多発している場合、②・③の不備や④の不全が考えられ、ステークホルダーとの適切な関係が築けていない可能性があります。
なお、ステークホルダー・エンゲージメントの5つの活動はプロジェクトの初めに1度実施すれば終わりというものではなく、新しいステークホルダーが認識された場合には以下のように「特定」からの活動を繰り返します。
特定→理解と分析→優先順位付け→エンゲージメント→監視→特定→理解と分析…
以上がステークホルダー・パフォーマンス領域の概要です。
★所感
プロジェクトの終盤で思わぬところから「聞いてないよ。」という声が挙がるのを防止する意味では、ステークホルダー・エンゲージメントは重要な活動だと考えます。
しかしながら、筆者はこれまでにステークホルダー・エンゲージメントをしっかりと実践しているプロジェクトを経験したことがありません。
そもそもPMBOKはこの通りにやりなさいというものではなく、自分たちのプロジェクトに使えそうな部分をつまみ食いしても何ら問題はないため、どちらかと言えば、ステークホルダー・エンゲージメントは他のプロセスよりも後回しにされていると感じます。
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